法学類について

法学類

法学類について

教員構成

公法・社会法部門

公法・社会法部門

畑 安次

【2007年度担当科目】

憲法第1部

【最近の研究分野】

18世紀フランス憲法思想,自民党憲法改正案の検討

【学生へのメッセージ】

授業は,テキスト[芦部信喜著,高橋和之補訂『憲法』(第3版,岩波書店,2006年)]及び『憲法判例百選(1)(2)』(第5版,有斐閣,2007年)を中心に進めます。しかし,憲法の学習は政治現象の認識が前提となります。日々の新聞報道等に目を通すことが必要です。

大学における授業科目の単位は,予習1・授業1・復習1の割合でワンセットにして組まれています。したがって,授業を聴くだけでは3分の1の価値しかないということになります。この点を十分わきまえてください。なお,授業中にレポートを課すことがあります。レポート用紙は出席している学生にのみ配布されますので,注意してください。

米田 雅宏

【2007年度担当科目】

行政法第一部,行政法第二部

【最近の研究分野】

危険防御法研究(警察法・環境法を中心に),行政行為論研究,行政訴訟法

【学生へのメッセージ】

驚かれるかもしれませんが,「行政法」という名前のついた法典は存在しません。一般に行政法とは,行政に関する法律のことを言いますが,行政活動が多種多様であるのに対応して行政に関する法律も数多く存在します。しかし私達はこれらの法律をすべて勉強することはできません。そこで学問としての「行政法学」は,これらの法律を幾つかの法概念だけを用いて説明することができるようにと考えました。その代表的な法概念の一つが「行政行為」というものです。しかし行政行為という法概念は,現実の法律には存在せず,ただ無数にある法律を分かりやすく説明するための「道具」概念であるすぎませんので,道具箱としての行政法学は,初学者に対して,しばしば抽象的で難解な印象を与えることがあります。行政法は難しいと言われる所以です。もっとも私達の日常生活が行政に強く依存したものになっている今日,行政法についての知識は欠かせません。「マンション耐震構造偽造問題」「小田急線高架化工事騒音問題」「中心市街地活性化と大規模店舗設置規制」「住基ネットと個人情報保護」等,最近の新聞記事から行政法と関連するものを思いつくまま挙げてみても,このことは明らかでしょう。詳しくは講義で触れることにしますが,まずは行政法についての具体的なイメージをもって頂くために,以下の文献を紹介しておこうと思います。是非手にとって参考にしてみて下さい。

・藤田宙靖『行政法入門(第五版)』(有斐閣・2006)
・高木光『プレッブ行政法』(弘文堂・2005)

・田村泰俊編『最新・ハイブリッド行政法』(八千代出版・2003)
・塩野宏・原田尚彦『行政法散歩』(有斐閣・1985)

稲角 光恵

【2007年度担当科目】

国際法第一部,国際法第二部

【最近の研究分野】

国際刑事裁判所,国際人権保障

【学生へのメッセージ】

新聞の国際面に興味ありますか。国際法は国家間の法,日本に住む自分には関係ない――なんて思っていませんか。国際社会の緊密化により,経済,文化,情報など,私達の日常生活は国際関係と密接に関わるようになりました。また,戦争の禁止やテロの抑止といった平和の問題に限らず,環境の保護や各国における人権の保障など,国際法により解決しなければならない問題は増え続けています。法は社会を規律する規範であり,社会が変われば法も変化します。国際法の講義では,変化しつつある国際法を現時点にとどまらず,歴史的,構造的に理解できるように授業を進めています。

そこで皆さんには日頃から新聞を読み,国内及び国外で何が問題となっているのか,社会の動向に興味を持って欲しいと思います。その上で,法の役割について考えていきましょう。国際法に興味を持たれた方は,身近な人権問題について書かれた横田洋三『日本の人権/世界の人権』(信山社,2003年)や,国際法全般については,松井芳郎『国際法から世界を見る:市民のための国際法入門』(東信堂,2004年)などを一度読んでみて下さい。

振津 隆行

【2007年度担当科目】

刑法第二部

【最近の研究分野】

刑事違法論,危険犯論,訴求禁止論等

【学生へのメッセージ】

刑法第二部は,従来刑法各論として表示されてきた学問領域を対象とします。刑法総論に比べて,各論では相対的に問題群が独立しているので,学習のためには比較的容易であるように思われます。各種のマスコミ等で報道される犯罪が,刑法学的にどのような内容をもっているかがわかり,よりよく問題点に関心をもつことができるようになります。

そこで,開講前の入門書として,山口厚『刑法』(有斐閣,2005年)がお奨めです。その他に,中 山研一『刑法入門(第2版)』(成文堂)なども推薦できるかとも思います。前者は,かなりアカデミックですが,後者は全く白紙の人にも勧めることができるでしょう。いずれにしても,学習意欲を もって,分らないことは積極的に質問等をしてください。

永井 善之

【2007年度担当科目】

刑法第一部 刑法第二部 刑法演習

【最近の研究分野】

違法・有害表現の刑事規制 共犯論 等

【学生へのメッセージ】

大学法学部において習得すべき法的犯罪成立要件論(犯罪論)のうち,全犯罪類型に共通のそれを対象とする科目が「刑法総論(刑法第一部)」であり,殺人・詐欺・放火・収賄等の個々の犯罪類型に特定的なそれに係るものが「刑法各論(刑法第二部)」です。前者においては構成要件該当性・違法性・有責性という犯罪成立要件の三段構造の体系的理解が中心となるため,日常的な犯罪報道内容などとは乖離した高度の抽象理論の連続に初学者には戸惑うところもあるかもしれませんが,個別の犯罪類型を対象とする後者では議論にも具体性があり,より親しみやすいかと思われます。いずれにせよ,刑法の学習においては,一方では国家刑罰権からの人権保障,他方では犯罪からの法益保護という相対立する利益の相克を法律論上調和的に解決しうる能力の修得が要請されます。学生諸君にはその学問的意義を認識しつつ,積極的かつ理性的に取り組むことを期待します。

中山 博善

【2007年度担当科目】

刑事訴訟法

【最近の研究分野】

被疑者の取調べに関する諸問題

【学生へのメッセージ】

刑事訴訟法講義では,当職執筆の「刑事手続法提要改訂版」(生協にて販売)を教科書として使用し,弁護士(元検事)として知り得た実務の現状を踏まえ,刑事手続の流れに沿って解釈適用上の諸問題を解説します。刑事訴訟法演習では,講義を履修することを前提にして,ゼミ生が提出した関心テーマを取り上げ,ゼミ生の報告とゼミ生間の議論を通じて,刑事手続の主要な論点に対する理解を深めます。基礎演習では,講義履修前の2年生を対象として,主として新聞報道を題材にしたゼミ生間の自由な議論を通じ,刑事手続きの基本理念を感受できるようにします。

授業前に前記教科書の判例引用部分を除く本文だけでも通読しておいて下さい。もっとも,前記教科書は論点中心で,講義と一体となって理解し得るところがあるので,もし理解が行き届かないようであれば,入門書として,三井誠・酒巻匡著「入門刑事手続法」有斐閣発行を一読するようお奨めします。

佐々木 潤子

【2007年度担当科目】

税財政法,国際租税法

【最近の研究分野】

アメリカ連邦所得税における所得控除

【学生へのメッセージ】

「税」というと,「法律らしくなさそう」とか「人権なんて関係するの?」などと思う人が多いようです。私自身,大学時代に税法ゼミを選んだのは,法律科目が苦手だったので,法律らしくなさそうだから,という理由でした。ところが,これが大きな勘違いだったんです。憲法,行政法,民法,商法…各種法律の応用の集まりなのです。

逆に,数字に弱いとダメかな? という人もいます。税法で確かに数字は出てきます。しかし,計算することがあっても四則演算程度なので,算数レベルです。

ちなみに,税についての知識は,必ずあなたの生活の役に立ちます。さぁ,税法を学んでみませんか?

税法の基本的な問題が簡単にわかる本として,三木義一『日本の税金』(岩波新書,2003年)をお勧めします。

名古 道功

【2007年度担当科目】

雇用関係法(労働保護法),外国書講読(英語)

【最近の研究分野】

日独における労働市場と法政策,雇用・失業政策(フリーター,ニート含む)

【学生へのメッセージ】

労働者は決して対等な立場で使用者と労働契約を締結できるわけではない。労働者の生存確保を目的として労働法が生成した。働くにあたって賃金,労働時間,男女平等,解雇などさまざまなルールが労働基準法,雇用機会均等法などに定められている。これを対象とするのが雇用関係法(労働保護法)である。また労働者は,労働組合を結成し,団交や争議などを通じて自主的に労働条件の改善をめざす。使用者と労働組合との法律関係を扱うのが労使関係法(労働団体法)である。

労働法が適用されるは就職後と思われがちだが,アルバイトにも適用される。アルバイトをしていて「おかしい」(例,アルバイト代が払われない,残業手当が払われない)と思ったら,労働法を調べてほしい。

労働者に一番深刻な影響を与えるのは「解雇」である。判例によって解雇を厳しく制限する解雇権濫用法理が形成されてきたが,これを立法化(現・労基法18条の2)するにあたって,この法理を緩和しようとするなど紆余曲折があった。島本滋子『ルポ解雇』(岩波新書・2003年)では,不当解雇の実態,立法化の舞台裏,労働裁判の実情などがわかりやすく書かれている。一読の価値は十分にある。

今年度から1年生を対象とするゼミが開講されるが,これは,法律・政治学を学ぶにあたって重要な役割を果たす。単に「出席している」のではなく,積極的に「参加」し,基礎知識などを十分に習得してほしい。

石田 道彦

【2007年度担当科目】

社会保障法

【最近の研究分野】

社会保険の法理論,医療保障と競争政策の交錯

【学生へのメッセージ】

公的年金,医療保険,社会福祉などの法律関係を研究する社会保障法は,今後の発展が期待されている法律学のひとつです。社会保障制度の多くは,社会で働いている人たちが病気や失業など生活をおびやかす事態に直面した時に,その生活を支えるためにできています。将来,皆さんは保険料や税金を払うことで社会保障制度を支えるとともに,制度を利用する立場になります。また,大学を卒業後,公務員として働く人は介護保険や生活保護などの制度を実際に運営することになると思います。

現在の社会保障制度が直面しているさまざまな問題を深く理解するためには,経済の仕組みや社会の構造,労働者の働き方がどのように変化しているのかを知っておく必要があります。このような変化を理解するために参考になるものとして,社会保障法の本ではないのですが,山田昌弘『新平等社会』(文藝春秋,2006年,1429円)を最近はお勧めしています。

井上 英夫(法学類準専任)

【2007年度担当科目】

福祉政策論

【最近の研究分野】

高齢者,障害のある人,患者と人権,ハンセン病問題,日本の戦争責任と731部隊

【学生へのメッセージ】

福祉政策論は,研究と同時に実践の学問でなければならないと考えています。そこで,大学での研究や教育の他,「固有のニーズ」=ハンディキャップをもつ人々の人権保障に重点をおき,金沢市障害者施策推進協議会会長,介護保険運営協議会苦情等専門部会長等として,障害をもつ人や高齢者等本人,住民が参加する福祉行政を推進しています。

また,2002年10月から2005年3月まで厚労省の設置したハンセン病問題検討会の委員長として,ハンセン病絶対隔離収容政策の検証作業に参加しました。現在は,ハンセン病療養所在園者の終生在園保障のために群馬県にある栗生楽泉園の将来構想に取り組んでいます。

井上『高齢化への人類の挑戦』萌文社,04年,井上監修『人権と医療』石川県保険医協会,05年(研究室で販売)などを読んでみて下さい。

2007年度「法学部ハンドブック」より