法学類について

私法学部門

樫見 由美子

【2007年度担当科目】

家族法

【最近の研究分野】

損害賠償における権利保護機能について

【学生へのメッセージ】

家族法は,わが国における婚姻制度(離婚を含む)・親子関係・相続といった私たちの生活に身近な関係についての法的ルールを扱う分野です。とはいっても,皆さんが日常的に感じている家族関係と法律が想定する家族法の世界とはだいぶ違っているかもしれません。授業ではその点のちがいというか,何故そうしたちがいが生まれるのか,それをどう解消したらよいのかなどを講義したいと思います。

<参考文献>

・野田進・松井茂記『シネマで法学』(有斐閣ブックス2000年)の中の4のラブ・ストーリーと5のいのちの部分を読んで,映画鑑賞などいかがでしょうか。

・樋口範雄『親子と法』(弘文堂1988年)

熊谷 士郎

【2007年度担当科目】

民法第一部

【最近の研究分野】

意思無能力法理,成年後見制度,責任無能力法理

【学生へのメッセージ】

民法第一部で学習する部分は,民法全体に通ずるルールを扱っているため,抽象度が高く,初学者にとってはかなり難解といえるかもません。しかし,具体的なイメージを持つよう意識しながら,あせらず繰り返し学習していけば,その内容を理解することは十分に可能です。受講者のそのような努力の助けに少しでもなるべく,できるだけ具体的な問題に即しながら,わかりやすい説明をするように心がけるつもりです。

講義に関連する入門書としては,道垣内弘人『ゼミナール民法入門(第3版)』(日本経済新聞社,2005年)と河上正二『民法学入門』(日本評論社,2004年)を挙げておきたいと思います。前者は,民法の財産関係に関するルールについて,「なぜそのそうなっているか」という点を重視した説明がなされ,しかも,先端的な話題にも言及されており,財産法全体を概観するのに適しているといえます。後者は,民法という学問の様々なアプローチが示されており,民法学の奥行きを感じさせてくれるものといえます。いずれも初学者向けと謳っていますが,学習が進んだ段階で読み返しても改めて勉強になる本だと思います。

川副 加奈

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【2007年度担当科目】

民法第三部,民法第四部

【最近の研究分野】

預金の帰属,医事法(特に,医事紛争における民事責任)

【学生へのメッセージ】

民法について,私の研究関心に引き寄せて少し話しておきましょう。みなさんは,「医事法」という言葉を聞いたことがありますか? 手元にある六法のどこを探しても医事法という名の法典は存在しません。極めて平たく言うと,医療をめぐる様々な法律問題を研究する分野,それが広義の医事法(学)ということになります。この医事法に向き合うためには道具(装備)が必要です。私は民法を担当していますが,民法は頼もしい道具の1つと言えるでしょう(もちろん,医事法は民法の展開領域にとどまらず,他の法分野とも密接に関わってきます)。民法は,社会に身をおく私たちの生活と密接な関わりを持っていますので(分かりやすい例だと,今取り上げた医療過誤の他,契約や交通事故,名誉毀損などを思い浮かべてください),日常生活の中で湧いてくるほんのちょっとした疑問の芽を摘むことなく大切にしていただきたいと思います。

そこで,民法を学習するにあたって,(必ずしも読むのが易しくないかもしれませんが)大村敦志『生活民法入門』(東京大学出版会,2003年)と星野英一『民法のすすめ』(岩波新書,1998年)の2冊をお奨めしておきます。また,医事法の世界をのぞいてみたいなと思った方は,手嶋豊『医事法入門』(有斐閣,2005年)を手にとってみてください。

福本 知行

【2007年度担当科目】

民事訴訟法第一部,民事訴訟法第二部,倒産法,法学概論

【最近の研究分野】

民事手続法(特に,民事訴訟法)

【学生へのメッセージ】

民事手続法は,民法,商法といった民事実体法と対置されます。実体法は,どのような場合に,どのような内容の権利・義務が発生し,内容が変わり,消滅するかを定めていますが,手続法は,裁判所がこのような権利・義務のあるなしを判断し,あるいはその内容を実現するためのプロセスを定めています。

このように,手続法は基本的に裁判所の中で起こるできことを規律しています。このため,実体法よりもイメージがわきにくい,とっつきにくいといわれます。しかし手続法の対象が,法の認める権利が実現されるプロセスそのものであることを考えると,法学部生としては,手続法をマスターしてはじめて1人前ということもできます。とくに,いわゆる法曹にとっては,手続法はまさに将来の「商売道具」ですから,とりわけ法科大学院への進学を考えている人は,学部の段階から手続法的な思考に十分なじんでおくとよいでしょう。民事手続の基本である民事訴訟の流れを知るのに役立つ本として,山本和彦『よくわかる民事裁判 平凡吉訴訟日記[第2版]』(2005・有斐閣)を挙げておきます。

淺木 愼一

【2007年度担当科目】

商法第一部,手形法・小切手法

【最近の研究分野】

商法史,商法の基礎研究

【学生へのメッセージ】

法律学の研究対象は,人間の生活関係である。したがって,社会と向き合って,まっとうな生活関係を築く努力を怠るような者は,法学部に在籍してはならない。

法律学においては,それ自体抽象的な生活関係というものを,さらに高次元に抽象化する作業が必要である。事象を抽象化して把握する能力に欠ける者は,法学部に在籍してはならない。

法律学を習得するには,たとえ母国語の文章を読むときであっても,辞書を用いて外国語を読むのと同等の,あるいはそれ以上の,注意が必要である。法学部の学生が文章を作成する場合には,これは他人が読むものであるということを常に念頭に置いて取り組まなければならない。諸君が健全な法律家たらんと志すのであれば,まず母国語を大切にすべきである。母国語を等閑にして,長文の読み書きを苦痛と感じるような者は,法学部に在籍してはならない。

諸君が有望な法学部生として大成するか,無謀な法学部生だったねと言われるかは,ひとえに諸君の刻苦精励にかかっている。結果については自ら責任を負うこと,決して他人のせいにしてはならない。

村上 裕

【2007年度担当科目】

商法第二部,証券取引法

【最近の研究分野】

会社法,とくに会社分割・M&Aなどの企業結合法制

【学生へのメッセージ】

よく「大学は遊ぶ所だ」ということが言われます。否定する方もいるでしょうが,私はそんなに間違っているとは思いません。というのも私は,大学は法律学・政治学などの学問の中で学問的道具を駆使して自分の知的好奇心に基づいて知的に「遊ぶ」ところだと思っているからです。そんな「遊び」の世界にハマってみませんか? きっと高校までの勉強とは全く違う感動が得られるはずです。

お奨めの入門書:私の専門は商法ですが,商法を学ぶにはその基礎である民法を理解しておく必要があります。そこで民法の入門書も含めると,(1)道垣内弘人『自分で考えるちょっと違った法学入門』(有斐閣・1998年),(2)我妻栄『民法案内1 私法の道しるべ』(勁草書房・2005年),(3)米倉明『民法の聴きどころ』(成文堂・2003年),(4)団藤重光『法学の基礎』(有斐閣・1996年)といったところでしょうか。入門書=簡単なものとは限りませんが,「とりあえず」でも読むことそれ自体が大切です。

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齊藤 高広
【2007年度担当科目】
経済法,国際経済法
【最近の研究分野】
情報交換活動と競争法,民事的規律と競争法

【学生へのメッセージ】

経済法と国際経済法は,国内外における経済活動を規律するルールを研究対象とする法律学です。私たちの日常生活,企業の事業活動,国・地方公共団体の行動,貿易など,社会や経済の実態とも深く関わる法律学の1つです。経済法の講義では,公正かつ自由な競争秩序を維持する独占禁止法を,また,国際経済法の講義では,多角的かつ無差別な自由貿易を推進するWTO法を中心に検討をします。

消費者としての立場だけではなく,ビジネスパースンや法律の専門家として活躍を期待される皆さんと,これまで培ってきた法的な思考を高めつつ,いかに法が私たちの生活や意思決定に影響を及ぼしているのか,一緒に考えることができれば幸いです。

★村上政博『独占禁止法』(岩波新書,2005年,700円)

★トーマス・フリードマン『フラット化する世界(上・下)』(日本経済新聞社,2006年,各1900円)

陳 一

【2007年度担当科目】

国際私法,国際取引法,外国書講読,基礎演習

【最近の研究分野】

特許法の国際的適用,国際取引契約における言語と翻訳の理論,公証行為の国際私法的側面

【学生へのメッセージ】

国際化社会においては,ある国際的な法律関係に適用されるべき法規はどの国の法律なのか,それをどう決めるべきなのかなどといった一連の問題が日々発生する。例えば,ある日本人とドイツ人のカップルが結婚しようとしているとする。彼らはどの国の法律に基づいて婚姻関係を結ぶことになるのか。また,例えば日本の会社が中国の会社から商品を輸入する際,当該取引契約の成立・効力はどの国の法律に基づいて判断するのか。これらは,専門用語で「準拠法の決定」問題と言うが,その答えを提供するのが国際私法という分野である(参考書:櫻田嘉章=道垣内正人編・国際私法判例百選(2004,有斐閣))。

では,国際取引法というはどういう分野なのか。上で挙げた商品輸入契約の例で言えば,この契約の「準拠法の決定」も問題となるが,国際的な取引を行う企業は,多くの場合,関係する国の法規だけでなく,当該取引に関連する国際的な慣習などを参照しながら契約を結ぶ。そこで,国際取引に関係する法規・慣習などを整理しながら取引実務上の処理の仕方について考えるのが国際取引法という分野である(参考書:高桑昭・国際商取引法(有斐閣,2003))。国際私法と国際取引法の学習過程は,国際化社会における「法の見方」について模索するプロセスとも言える。

大友 信秀

【2007年度担当科目】

知的財産法,基礎演習

【最近の研究分野】

特許クレーム解釈と均等論,国際的知的財産権侵害とその解決方法

【学生へのメッセージ】

知的財産法は,特許法,商標法,著作権法等を対象とします。これらは,すべて民法の特別法という位置づけになります。知的財産法の受講には,したがって,民法を含む私法一般の理解が欠かせません。また,知的財産法は,ヨーロッパで発展し,世界的にも注目されている分野なので,米国法,ドイツ法等の知識も,その理解に必要となります。

知的財産法の講義及びゼミは,上記を素材に,就職後に必要なアウトプット能力をも形成するよう構成されています。

講義及びゼミ受講前の準備としては,民法及び民事訴訟法の勉強を第一に求めます。余力のある方は,以下の文献で知的財産法に関する知識にも触れてみてください。

【知的財産法一般について】 相澤英孝・西村ときわ法律事務所編著『知的財産法概説』(弘文堂,2005年)

【著作権法について】 中山信弘『マルチメディアと著作権』(岩波新書,1996年)

*特許法に関心のある方は,本学知的財産本部を一度訪ねてみてください。

2007年度「法学部ハンドブック」より