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西岡 晋(政策過程論)

西岡 晋(政策過程論)

みなさん、こんにちは。今年(2007年)11月に本学部に着任しました。政策過程論という分野を専門に研究をしています。

政策過程論とは、公共政策が立案・形成・決定・実施・評価される、その過程を分析し、なぜ、どのようにして政策が作られていくのかを明らかにするものです。このような視座は、あるべき政策の姿を規範的に論じるものとは、間接的にはかかわっていますが、とりあえずは一線を画すものです。政策過程を事後的に解釈、説明することが、主たるアプローチです。たとえば、年金制度の問題が浮上したとき、どこに年金制度の課題があり、それをどのように解決すべきか、いかなる制度を構築すればよいのか、といった問いの立て方よりも、どのような政治的プロセスを経て年金制度が今のような形になったのか、なぜ年金制度の改革は進まないのか、といったような問いを立て、それに一定の答えを示そうとするのが、政策過程論的な視座といえます。

しかし、政策過程論の目的は単に政策の形成過程を分析するだけでなく、最終的には「誰が支配するのか」という、政治学でも古典的な、権力の問題を解明することにあるといえるでしょう。権力の在りかを見定め、権力の偏在を解明し、それによって民主主義の活性化に寄与しようとします。そして、権力配置のあり方は、政策の内容をも規定するのです。

私自身が政策過程の研究に深入りするようになったのは、民主主義への貢献というような「高尚な」理由だけではありません。政策過程は、どこか、人生とも似ている、と感じたからです。この分野で著名なキングダンという学者は、あまたある政策案のなかから一つだけが生き残っていく過程を生命の進化になぞらえつつ、最終的には「政策の窓」が開いた決定的なチャンスに、アジェンダ(課題)の設定が行われると、論じています。その詳しいお話は、講義のなかでしたいと思いますが、要するに、政策過程とは「必然」と「偶然」が支配する世界だということです。何やら、人生ともどこかでつながる話ではありませんか。

このように考えてみると、学問の世界は、実に広大であり深いのです。学問を通じて、人生や世界についても考えをめぐらしてもらえれば、大学にいる価値は大いにある、と私は思います。

2007年12月11日掲載