法学類月報第132号を発行
法学類月報は、広報委員会および学生ボランティアの協力により、法学類の最近のトピックやコラム、エッセイなどを通じて法学類の「今」を関係者の皆様にお伝えするものです。
※試行的にhtml版を直接掲載しています。PDF版はページ下部のリンクからご利用いただけます。
熊の目撃情報が増える時期です(イノシシも!)。熊鈴などで対策しましょう。今号は大貝先生による離任の挨拶、キャンパスビジット開催報告、先輩メッセージです。
教員エッセイ 第88回 大貝 葵(刑事訴訟法)
2013年、金沢大学に着任して12年間もの間、金沢大学にお世話になった。初めて就職をした大学では毎日が緊張の連続であったし、初年度や2年目の授業の内容はものすごく稚拙で肩の力も入りまくって、当時の学生の皆さんには謝りたい気持ちでいっぱいである。この月報も、最後になると思うと、何を書こうか!?と力んでしまい、12年間の成長はないな…と痛感する。
金沢大学での思い出深いことの一つは、雪である。角間坂に続く木々が雪帽子をかぶり、銀色のアーチが続く。その雪道を、学生のみなさんが、ぽつぽつと登っていく。人が一人通れるくらいの除雪がされている道をのぼる学生さんの姿を「たくましいな」と思う。これが登り切れるなら、どんなところでも、彼らはやっていけるな~と思う。最後に、無音の銀世界となっている駐車場にたどり着く。関西からきた者には、何度見ても感動する。写真を撮っていると、脇を同僚の先生が笑いながら通り過ぎていく。こんなに雪が降ってしまっているし、仕事ができなくても仕方ないやという気分になり、のんびりしてしまう。毎日、あっという間に過ぎてしまうが、雪のおかげで、少しゆっくりと時間を感じることができる。関西でくじけそうになったら、雪道を黙々とあるく金沢大学の学生さんの姿を思い出そうと思う。私自身は、一度も、雪の角間坂を歩いたことはないけれど。
初夏のこの時期に、雪の話で少しでも涼となれば…。
最近の出来事から:「春季キャンパスビジット」を開催しました
5月17日(土)に、金沢大学法学類のキャンパスビジットが開催されました。午前の部には75名、午後の部には64名の高校生と保護者の方々にご参加いただきました。当日は、合田先生による学類紹介の後、森廣が模擬講義を担当し、最後には参加者の皆さんと現役の法学類生とのトークセッションが行われました。
私の模擬講義では「暮らしの中の行政法入門」というタイトルのもと、まずは簡単な事例を題材に、私達の日常生活の中で行政法が関係する場面を探すところから始まりました。私の普段の講義と同様に、マイクを回して高校生の皆様にお答えいただく方式で、実際の講義の雰囲気を体感していただきました。
その後は、行政法の重要なルールである「法律による行政の原理」を紹介したうえで、その例外である行政指導に関する問題を検討しました。行政指導については、現在、児童相談所が一時保護中の児童の保護者に対して、行政指導を用いて児童との面会制限を行なうことの違法性を争う訴訟が相次いでいます。もっとも、行政処分により強制的に面会制限を行なう方法がある中で、なぜ行政指導という手法が用いられているのでしょうか?「法律による行政の原理」を理由に、行政指導を用いた面会制限を常に違法と考えることは果たして妥当といえるのでしょうか? 研究者や実務家にとっても非常に難しい、答えのない問題を扱いましたが、皆さん熱心に耳を傾けて考えてくださりました。
法学類はもちろん、法律の世界に関心を持つきっかけになったのであれば幸いです。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました!
森廣祐也(行政法)
先輩Message:「自分の足で歩く物語」
私が学生だった頃、金沢から外に出るには工夫が必要でした。就活で東京へ行くにも新幹線はなく、夜行バスでの往復。面接は1日2社を掛け持ちするのが当たり前で、限られた機会をどう活かすかに必死でした。就活だけでなく、「外の世界」に出ることそのものが、自分で動かなければ得られない時代でした。
法学類1期生として、いろんな世界を見たくて、タフツ大学での語学研修や自転車での日本縦断も経験しました。寝袋ひとつで旅をしながら、土地の匂いや現地の人の言葉に触れた体験は、今も鮮明に残っています。予想外の出来事の連続でしたが、そのひとつひとつが自分を鍛えてくれました。
法学類公認サークル「法友会」内で「法教育プロジェクト」を立ち上げたことも、大きな糧になりました。試行錯誤の中で衝突も多々ありましたが、私は「健全な衝突」を恐れませんでした。真剣な対話こそ、考えを磨く場です。心理的安全性が注目される今だからこそ、あの時のぶつかり合いの価値を改めて感じます。法教育の活動は、その後東京の学会で発表することになりました。たった一人、学生の身で初めての学会に出向き、慣れないスーツと名刺を手に、重鎮の先生方に話しかけたときの緊張と興奮は、今でも忘れられません。
陽明学に「事上磨練」という言葉があります。実践の場でこそ人は磨かれるという意味です。金沢には学都の持つ静けさがありますが、ときに山を下り外に出てください。知らない街で心が揺れた経験や、小さな一歩を踏み出した記憶が、何年後かに自分を支えてくれることがあります。自分の足で歩いたあなたの物語は、きっと誰かの希望にもなります。そんな旅路を、私は心から応援しています。

卒業してから13年、福本先生と
青山晃大(2012年法学類卒)
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