法学類月報第104号を発行
法学類月報は、広報委員会および学生ボランティアの協力により、法学類の最近のトピックやコラム、エッセイなどを通じて法学類の「今」を関係者の皆様にお伝えするものです。
※試行的にhtml版を直接掲載しています。PDF版はページ下部のリンクからご利用いただけます。
今号は長瀬先生のエッセイ、税務署・税関見学についての学生さんの寄稿、今年の夏に移転開館した石川県立図書館副館長からの先輩メッセージです。「サードプレイスとして…」と書かれていますが、新県立図書館は居心地いいので、角間からは少し離れていますが、ぜひ訪ねてみてください。
教員エッセイ:
第64回 長瀬貴志先生(法科大学院/民事実務)
教員エッセイの順番が回ってきたとき、正直いつも悩みます。で、今回も悩んでおります。ネタはいくらでもあるのです。しかし何をどう書こうかと悩んでいたところ、ふと、そもそも人はなぜ悩むのかと思いが脳裏をよぎりました。そしてその答えは学生時代、通っていたバーの方が教えてくれました。「そりゃ自分が可愛いからやろ。」と。当時の私は「なるほど」と腹落ちしました。しかしなぜ当時の私が腹落ちしたのか、正直よく分かりません。
仏教の言葉で言亡慮絶とか絶言絶慮といったものがあります。これは主観も客観も超越した、言葉では説明できない状態を指すようですが、腹落ちもこんな感じなのかもしれません。しかしそもそも主観・客観なんてものは本当にあるのでしょうか。我ありと思う我は本当に存在しているのでしょうか。西洋の考え方って本当に正しいのでしょうか?
皆さんが勉強している法学は、コテコテの西洋的な思考方法をベースにしています。それが当たり前すぎて、気づかないうちにその思考の枠にはまってもがいている、そんなことはよくあります。しかし、実はその先に別の思考の余地が広がっている可能性がある、ということは知っていてほしいです。というわけでいろいろ勉強してください(文化人類学や東洋哲学、面白いですよ。)。
とまぁ、ここまで書いて、こんな月並みな内容でよいのだろうかと悩んでおります。悩みたいんですね、人間って。仕方ないなと思いつつ、また悩む今日この頃でした。
寄稿:「税務署」&「税関」に行ってみた!
12月の初旬に、「税財政法」の講義の一環として、税務署と税関を見学しました。金沢税務署を見学する以前は、「確定申告=書類作成が面倒」と思っていましたが、源泉徴収の仕組みを学び、スマホでの申告を疑似体験してみると、これまでの先入観が払拭されました。アルバイトをしている私達学生も、給与所得者であり、税金についての知識を身につけておくことが大事だと感じました。税務職員の仕事の魅力・職場環境の良さなど、実際に働いているかたの「生」の声を聞けたことも、進路を考えるうえで、とても貴重な機会だったと思います。(N.H.)
小松空港の税関では、業務内容を始め普段じっくり見ることのできない出入国審査の場所や、X線、金属探知機、実際に摘発されたコピー商品な
どを見せていただきました。コピー商品は本物と見紛うものばかりで、このような摘発が毎日全国で起きていることにも驚きました。税関職員というと厳しい印象がありましたが、みなさん気さくな方が多く、仕事について分かりやすく楽しく教えてくださり、イメージが変わりました。もともと税関での仕事に興味を持っていましたが、より一層、働いてみたい場所だなと思いました。(H.M.)
小松空港にて
先輩メッセージ:「天の時、地の利、人の和」
キャンパスが金沢城公園内にあった1982年に卒業し、40年が経ちました。その間、県庁で様々な仕事を経験し、現在、石川県立図書館で働いています。
学生時代は試験のためだけの勉強をしていた感がありましたが、県庁生活で、様々な法律問題にぶつかり、金沢市立図書館(旧県立ではなくて!)に行ったり、書店へ行ったりと、学生時代にはないくらい専門書を調べ、判例を探し、弁護士事務所にも相談に行くことが多々ありました。やはり、人間、切羽詰まらないと真剣に勉強しないことをつくづく実感をしました。
でも、今思えば、学生時代に学んだ土台があったからこそ、その上に社会経験も積み重なり、不思議と困難に向かっていく力が養われたように思われます。皆さん、気力と体力のあるうちに、どんなことでも貪欲に吸収してくださいね。将来の糧とするために。
また、法律問題以外でも、正解の見えない仕事に追い回されましたが、直ぐ答えが出なくても、頭の中で悩み事が発酵するのに十分な時間が経過すると、不思議と光が見えることがありました。悩むことから逃げないことが大切です。
自分の好きな言葉に、月並みですが、『天の時、地の利、人の和』があります。チャンスは捉まえる必要がありますし、様々な能力や経験を活かす必要はありますが、決して一人では何もできなかった。何といっても必要なのは、同じ方向に向かって、関係者が力を合わせることでした。
その結果、平成19年の能登半島地震の復興支援、北陸新幹線の金沢開業や、国の天然記念物トキの石川県での公開、そして、新県立図書館の開館と、県庁内外の多くの方々の協働により実現できました。
皆さんも、一人で悩まず、仲間や相談できる誰かと一緒に悩みましょう。案外、最善の策でなくても、次善の策など、解決の糸口が見えることがありますよ。
最後に、石川県立図書館においでください。家でも、学校でもない、サードプレイス(第3の居場所)として何かと出会える空間です。皆さんを心よりお待ちしております。
伊藤 信一(石川県立図書館副館長)
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